ちょっとしたエピソード

空色の王国【第二話】

【第二話】   (第一話はこっち)
北海道夕張市。人口1万人の小さな町。
炭鉱で栄えていた頃は10万人以上の人間が住んでいたというから、今は全盛期の10分の1にまで人口が減っていることになる。

近年は市の財政破綻の影響で人口減少に拍車がかかっているらしい。
駅前も閑散としていて歩いている人はいない。
聞こえるのは絶え間なく鳴き続けるセミの声だけだ。

赤茶けた駅舎はなんとなく寂しそうに見えるが、不思議と温かみが感じられる。
こうしたただ何となく流れていく時間は好きなのだ。

わたしの地元、松戸市は千葉県だが、千葉県と言っても東京の延長線上としてあるようなところだし、高校も大学も東京だったから、一応「都会人」ということになるのだろう。

でもわたしは都会が嫌いだった。
今も好きとは言えない。
みんな何かに追われるように生活していて、やたらと人ばっかりで。
一見活気があるように見えてもそこにいる人々は人形のように冷たい印象を受ける。
本当に表だけ立派に飾られているだけで、いつも見えない敵とやみくもに戦っている。

もちろんそうじゃない人もいるけど、大多数の人に当てはまると思う。
でも、そんなところで自分もずっと生活しているのだし、今さら自分ではどうしようもない。
親戚もみんな近隣のためほとんど地元を離れる機会もなく、せいぜい小さい頃家族旅行でどこかに出かけるくらいだったから、ずっと田舎というものに憧れていた。

小学校の頃、「夏休みは田舎のおばぁちゃんちに行く」と行っていた子が羨ましくて、何度もお母さんに「ウチは田舎に行かないの?」って聞いたものだけど、
「先週柏のばあちゃんち行ったでしょ」と言われておしまい。
柏って・・・隣町なんですけどっ。

その後も田舎に憧れる毎日は変わらず、大学に入って外泊を許してもらえるようになってからは、よく一人で遠くに出かけるようになった。
ただ気ままに、とにかく遠くに。

一人旅すると言うと両親がうるさいから、いつも「友達と一緒に行く」と言って出てくる。
だから今わたしは詩織ちゃんと北海道旅行を楽しんでいることになっているはず。
2日に1回くらい、自宅に電話さえすればたぶん大丈夫だよね。

友達とかと旅行することもあったけれど、どうしても余計な気を遣ってしまうし、自分の好きなように動くこともできない。人に合わせてまで人付き合いしたくないのが本音だけど、こういうこと言うとたいてい「協調性がない」だとか非難されるし、働き始めたらそうも言っていられない。

あんまりこういうのは女の子っぽくないのだろう。きっと、普通の女の子だったらわいわいがやがや騒ぎながら大勢で旅行するのが楽しいと思うはずだし。

男の子はこういう旅行が好きなのだろうか。
正直男の子のことはよくわからない。
学校には男子は少ないし、バイト先の男の子もちょっと苦手だ。
男の子同士で会話している様子を見るとすごく楽しそうで羨ましいんだけど、わたしが会話してもなんとなく掴みどころがなくて、表面上だけよく見せようとしているところが丸分かり。これは多分わたしが女なのが悪いんだと思う。

こんな性格のためよく母親が「もっと女らしくしなきゃ嫁の貰い手がいない」と嘆いている。いちいち余計なお世話だと思うが、自覚していることであるため反論はできない。自分も男に生まれたかったな・・・。当然彼氏などできるはずもない。


「ふぅ、全然ダメだぁ・・・。」


通りすぎていくトラックを見つめてわたしは声を漏らす。
ここに立ってもうかれこれ3時間が経過。
馬橋駅で買った青春18きっぷを昨日で使いきったから、駅の窓口で購入したいということを若い駅員さんに告げると、


「すみません、発売は8月いっぱいまでなんですよね。」


と。

そうか、もう9月だった。
使用期限は9月10日まででも、発売は8月31日まで。
駅員のいる駅ならどこでも買えるだろうと思ってこのことをすっかり忘れていた。
自分の馬鹿さ加減にうんざりする。

順調に進んでいると思っていても、どっかで重大な失敗をしていることが多い。
「天然」と言ってしまえば聞こえはいいが、自分では割と悩みの種だったりするのだ。

帰りの飛行機は釧路発9月5日の便。
予約便の変更はできないから、資金を温存しつつ、釧路まではなんとかして辿り着かなくてはならない。
釧路まで行くだけなら普通にきっぷを買って行けばいいのだが、片道5000円かかってしまうことを考えると本当に行っただけで終わってしまうような気がして、こうしてヒッチハイクをしている。
最初に停まった車の行き先は占冠(しむかっぷ)の市街地、もう一台のトラックは日高方面だったので断ってしまった。せめて清水まで抜けられればと思ったけど、なかなか上手くはいかないみたい。


「あーあ、どうしてこうなっちゃったんだろう」


ふと上を見上げると、さっきまで晴れていたはずの空がすっかり曇っている。


「あ、やばい、一雨きそう。」


あれほどけたたましく鳴いていたはずのセミの声は一斉にやみ、雨がザーザーと降りだす。
おばさんが小走りに郵便局へ入っていく様子が見えたけれど、わたしは動く気が起きなかった。あそこに乗用車が一台信号待ちしているから、これでダメだったらひとまず雨宿りして次の方法を考えなきゃ。

わたしの横を少し通りすぎて、その車は停まった。





=================================





「車が事故ったとき、一番人が死にやすい席ってどこだと思う?」
「事故起こしたときですか?んー、やっぱり運転席かな?」
「ぶぶー、正解は今きみが座っている席。助手席だよ(ドヤァ)」
「えっ!そうなのっ!?」
「そう、運転席に座ってる人は無意識のうちに回避行動をとるから、もし事故を起こしたとしても重症にはなりにくいらしい。あくまでも統計上の話だけど。」
「じゃああれですか、今この車が事故ると、わたしが真っ先にオジャンなんですねw」
「正解。だから気をつけてね!」
「マジですか・・・うぅーん・・・降りようかな・・・」



とりあえずくだらねぇ冗談を交えた会話くらいはできるらしい。
僕のコミュ力もいつの間にか上昇していたみたいだ。なんとかなってる。

でもワキ汗の分泌量がやばい件について。
僕は昔から女子が隣にいるとその緊張から無条件でワキ汗が分泌される体質である。
こんな狭い自動車の車内であるがゆえ、においを発していないかどうかが不安だ。

少しだけ窓を開ける。草のにおいが鼻を通り抜けた。

まだ周囲は緑に囲まれているが、なんとか無事に前半戦を終了といった具合だろう。
あと10分もすれば日高の市街地に出るだろう。道もしだいになだらかになってきた。


「あの、えーと、さ・・篠山さん?」
「なんかたどたどしいですね、遥香でいいですよ遥香で」
「あぁじゃあその・・は・・・はるか(←関空特急的な意味ではない)」
「ふふww面白いなぁwwで、なんです?」
「なんか僕からかわれてるの?」
「えー、気のせいですよー」
「まぁいいや、ちょっと休憩しようか?もうすぐ道の駅があるけど、またそれ過ぎると1時間くらい山道だし。」
「あ、いいですね。賛成です。」


トイレを済ませて僕は車に戻ってきた。遥香は売店を見て回っている。
一緒に行きましょうよと誘われたが、運転で疲れたからと言って断った。
だってその・・・あの・・・女とドライブしていると思われたら嫌だろ??てやんでぇだよお嬢ちゃん。

缶コーヒーを飲み干す。
微糖のはずなのに甘ったるい風味が口に残った。


「はぁ、やれやれ」


また意味もなく本日二度目のセリフを口にすると、ミラー越しに遥香の巨大な荷物が目に入った。

この中にあんなものやこんなものが入っているのだろうか。
パンツとか。ブラとか。どんなものが入っているのか、ぜひとも拝借したいところだが。
あともしも「大人のおもちゃ」とか入っていたら・・・。ふとした拍子に後部座席からぶぃんぶぃん音がしてきたりだとか。
なんかそれはそれで萌えそう。
そのときあの子はどんな反応をするのか。ふひ・・・ふひひひひ・・・w
いつもの妄想癖を発動させ頭の中をピンク色に染めつつニヘラニヘラしていると、遥香が戻ってきた。
やばい。


「お待たせしました」
「待ってねーよ」


ニヤニヤていた顔をとっさにハードボイルドに戻した拍子に口調が成田隼人になってしまった。
反省はしている。


「なんかまた態度冷たくなってるし、素直にならないとコレあげませんよ?」

遥香は紙袋に包まれた何かをヒラヒラさせた。


「ごめんなさい。口がすべりました。なに買ったの?」
「あ、やっぱり食べたいですか?たい焼きです!」


北海道まで来てたい焼きかよ言いそうになるのをこらえる。
彼女なりに気を遣ってくれているらしい。
その笑顔を見ていたら、甘いものは苦手だとも言えない。
僕は素直にそれを受け取った。
遥香はたい焼きを頬張りながら、あずきは十勝産だとか、北海道の味がするとかろくでもないことを楽しそうに語っている。
気の利いた返事も相槌もできないけど、なんだろう、こういう雰囲気は嫌いではない。
口元が緩むのを抑えながら、僕は再び車を発進させた。




つづく




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Comment
はるか様かわゆす
なかなかの妄想力ですねwww小説家目指せーwww

>>学生たん
そりゃあ可愛いよ!当たり前だよ!
黒髪だし!
妄想は無限にできるけど、文字にしようとすると難しいですな。

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統計開始日:2006年11月7日
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プロフィール

4様ゲッター ◆4sama4.AtQ6J

Author:4様ゲッター ◆4sama4.AtQ6J
細々と大学生活板コテハン(既卒)
【性別】
男の子
【職業】
社畜
【出身地・居住地】
東京都
【趣味】
鉄道,野球観戦,アニメ,ゲーム,漫画,2ch等
【特技】
人を怒らせること,キモがらせること,嫌われること
【好きな声優(表)】
後藤邑子,新谷良子,緑川光
【好きな声優(裏)】
北都南,まきいづみ,あじ秋刀魚
【好きな絵師】
樋上いたる,ほんたにかなえ,七尾奈留,カントク,杉菜水姫,狗神煌
【好きなライター】
麻枝准,奈須きのこ,すかぢ,王雀孫
【好きな歌手】
BUMP OF CHICKEN,倉木麻衣,Mr.Childlen,Lia,Rita,霜月はるか

・複合型のヲタ
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・千葉ロッテマリーンズファン
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