ちょっとしたエピソード

空色の王国【第三話】

目の前にはどこまでも青い世界が広がっている。

潮風の香りが鼻をくすぐる。

ふわふわした暖かい風をあびながら、かすかに聞こえる波の音に耳をすませた。



周囲には誰もいない。

ただ一人を除いて。

すぐ隣には人影があった。

顔はよく見えない。

誰?

体格から男の人だということだけはわかった。

口が動いているのが見えたが、何を話しているのかわからない。



それにしても、この居心地のよさはなんだろう。

全てを包み込むような、お父さんのような優しさがある。

不思議な世界だ。

なぜだか理由はわからない。

けど、このぬくもりに包まれて、ずっとこうしていたいと願いながらわたしは目を閉じた。



=============================



田舎の道は少し市街地を外れると信号がほとんどなくなる。
峠を越える間にあった信号機はわずか1機だけだった。
こうした場所にある信号機でも、国道同士の交差でもない限りはたいてい赤信号に引っかかることもない。
逆に言えば、運転中に心を休める暇もないから疲労もたまりやすい。
今は数時間ぶりに、新夕張駅前で引っかかった赤信号以来の赤信号で車を停車させた。


「静かだ」


助手席に座っている「お姫様」はお疲れのようで、スースーと寝息を立てながら眠っている。
話してみると割と活発な子だと思うが、こうして寝ている姿からは全くそういった想像は受けない。
綺麗な寝顔、肩の下まで垂れる黒髪、お世辞にも豊満とは言えない華奢な体、腹の部分のシャツがちょっとだけめくれて白い肌が見えた。

今なら寝込みイタズラもできるんじゃね?・・・
おっぱい(たぶん“ちっぱい”)触ってもバレないだろうか・・・?ハァ・・・ハァ・・・
などと、またしても頭の中を桃色にしながら、息を荒くするキモヲタである。


「やばいやばい抑えないと、ガンバレ俺、耐えるんだ。欲望よ飛んでけ!品川北品川新馬場青物横丁鮫洲立会川大森海岸平和島大森町・・・」


頭を振って魔法の言葉(←ただの駅名です)を口ずさむ。
信号が青になったのもあいまって、なんとか理性は保つことができた。
豚小屋行き回避。

道の駅でゆっくりしてしまったから、当初の予定よりやや遅れ気味だ。
西日に照らされ、牧場の間を通る道は茜色に染まっていた。


【遥香】「ん・・・ぅんん・・・」


ほら、僕がブツクサブツクサ言っていたせいでお姫様を起こしてしまったではないか。結局おさわりっちするチャンスを逃した!うがー!


【健一】「おはよう」

【遥香】「あ・・・はい、おはようございます」

【健一】「あと20~30分で帯広着くよ」

【遥香】「はあ、もうそんなですか」

【健一】「うん、駅で降ろせばいい?」

【遥香】「あー、えーと・・・どうしようかな、泊まる場所も全然決めてないし」

【健一】「あぁそうか、これもイレギュラー事態だったからかw」

【遥香】「はい、まあ駅前だったらホテルくらい見つかると思いますけど」


どうしよう。
なんかこのまま別れるのがもったいないと思ってしまっている自分ガイル。
ただもう少し遥香と一緒にいたいと感じている事実は否めない。
邪な考えだが、ここはひとつ・・・


【健一】「あ、あのさぁ・・・」

【遥香】「はい?」


髪を揺らし、微笑みながら首をかしげる仕草がかわいかった。





遥香とともに宿に到着したときには、日はすっかり落ちていた。
初老の夫婦二人で経営していると思われるその宿は、ログハウスのような外観で内装のいたるところに木が使われている。

今日は僕ら以外に2組のお客さんしかいないらしい。
夕食も二人分用意してくれるとのことで、なかなか良心的ないい宿だ。



しかし・・・

なぜ俺たちは同じ部屋にいるのだろう?
だってゲストハウスって普通あれだろ?ドミトリー形式の男女別になるはずだろ?
就寝時刻まで談話室的なところで語り合っていても、部屋は別々だから「それじゃあまた明日ね」「うんおやすみ」なんてやり取りをして別れるのが一般的じゃないのか。

んで、宿のオバさんが「若いっていいわねぇ~」なんてたわけたことを口にしながら案内されたのはなぜか個室。なぜゆえ?
そしてこれまた不思議なことに、遥香はそれを全く気に留める様子がない件。


【遥香】「綺麗な部屋ですねー、木の温もりが伝わってきますねー」


と、部屋をウロウロしながらよくわからんことを言う。
うん確かに綺麗だよ、部屋も君もね・・・はい。

それよりこの状況については何も言うことないのだろうか?アホの子なのだろうか?いや俺がむしろ気にしすぎなのか?俺一人がしどろもどろしている方がよっぽどアホの子なのだろうか?誰か教えてくれ品川北品川新馬場青物横丁・・・


【遥香】「あれ?どうしたんですか健一さん?」

【健一】「い、いや、だってその、ほら。ね?あれだって。」

【遥香】「ごめんなさい、わけわからないです。日本語でお願いします」

【健一】「ほら、なんていうかそのぅ、だ、男女で、お、同じ部屋ってのはまずいのではないかと思ったわけですが・・・」

【遥香】「あぁー、なんか普通に同じ部屋案内されちゃいましたね」

【健一】「うん、部屋も余ってるみたいだし、宿の人に行って別々にしてもらう?」

【遥香】「それでもいいですけど、急にきてまた部屋用意してもらうのも悪いですし、わたしは健一さんと一緒でもいいですよ?」

【健一】「い、いやだって、も、もし仮に・・・仮にだよ?僕が襲いかかったらなんてことは考えないの・・・?ねぇ・・・?」

【遥香】「えーwwwないないwwwないですよーwww」

【健一】「な、ななぜそう言い切れるっ!」

【遥香】「ほらだって、もしそういうことする人なら、あれだけの車で山の中走ってるときや、わたしが寝ていたときとかにふしだらなことできたはずじゃないですかーwww」

【健一】「ぬぬぅ・・・(^ν^;)」

【遥香】「健一さんはおもしろいなぁww」


このお嬢は純粋で健全なる二次元系男子を完全にナメやがっております。
ここまで何もしていなかったからって、これから先も何もしないとは限らないんだぜ?ちくしょう。



結局遥香の言っていた通りその晩は本当に“何もなく”終わった。
でも風呂上りに遥香がメガネをかけていた姿を見たときは正直萌えすぎて悶え苦しんだ。
よく理性を保つことができたと思う。
おかげで寝る前にしていたはずの会話は全然覚えていない。




つづく

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Author:4様ゲッター ◆4sama4.AtQ6J
細々と大学生活板コテハン(既卒)
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【好きな声優(表)】
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