ちょっとしたエピソード

空色の王国【第四話】

窓を打ちつける雨の音で目が覚めた。


「雨すっご」


僕は立ち上がりトイレに向かった。
遥香はまだ寝ているようだ。


「あら、おはようございます」


宿の奥さんに声をかけられる。


【奥さん】「今日たいへんみたいよ~、大雨洪水警報だって」

【健一】「警報出てるんですか?全然知らなかったです」

【奥さん】「なんか四国の方に台風がきてるみたいで、それの影響だって。困るわね~。」


マジか。
北海道でも台風の影響って受けるのか。
雨もすごいし・・・大丈夫かよこれ。


【奥さん】「もし出られないくらいひどいようなら、もう一泊してく?今日は予約が一人も入ってないのよ?」

【健一】「あー、はい、考えておきます。」


大雨は想像以上のものだったようで、
朝食中にテレビにはこの台風が早くも各地に被害をもたらしている様子が映しだされていた。


【遥香】「すごい雨ですねー」


遥香はバターロールを頬張りながらのんきに言う。
結構他人事じゃなかったりするんだが・・・。

北海道の道路も山間部を中心に土砂崩れの懸念から通行規制がかかっており、雨が続くようなら規制区間が拡大する可能性があるらしい。
昨日まで天気のいい日が続いていたのに、ここへきて予定の変更はやむを得ないようだった。
さすがにこの雨では撮影には向かえない。


【健一】「遥香、今日どうする?」

【遥香】「ちょっとこの雨じゃどこも行けなさそうですね・・・池田の方に行こうと思ってたんですが・・・」

【健一】「警報出てるし、汽車も動くのかどうか。午後はもっとひどくなるっぽい」

【遥香】「えー・・・困るなぁ・・・」

【宿の主人】「もう少し様子見てみてはどうだろう?一応チェックアウトは10時だけど、オーバーしても構わないから」

【健一】「その場合、料金はどうしましょう?」

【宿の主人】「いやいや、昨日の1泊分だけでいいよ。一応非常事態だ。お客さんが安全に出発できないなら、うちもそれなりの対応をするまでだよ。今日の予定はどうなっているんだい?」

【健一】「SLを撮りに行こうと思っていたんですが、ちょっとこの雨では・・・。列車の写真が撮れないなら特にやることもないです」

【宿の主人】「そうかそうか。じゃあゆっくりしていきなさい。」

【健一】「申し訳ないです。そうさせていただきます」


思えばこの頃から遥香の様子はどこかおかしかった。





目が覚める。


「げっ、もうこんな時間」


時計を見ると16時を回っていた。
未だに雨は強く窓を打ち付けている。
談話室でずっと本を読んでいたが、そのあと疲れて眠っていたようだ。


「やっぱり今日は無理だな、もう一泊させてもらおう」


宿の主人にそのことを申し出ると快く承諾してくれた。

部屋に戻ったところである違和感に気がつく。
遥香がいない。
荷物もない。
部屋のテーブルの上にはメモが置いてある。




2日間本当にお世話になりました。お先に出発させてもらいます。
ご迷惑おかけしてすみませんでした。
  篠山 遥香




ただそれだけ。
ご丁寧に5000円(宿泊費のつもりだろう)を添えて。


「あのバカ・・・」


携帯電話を開いて電話しようとしたところで気づいた。
そういえば連絡先聞いていない。


「クッソ!」


【宿の奥さん】「あらどうしたの血相変えて」

【健一】「あっ、すみません。僕のツレ見ませんでしたか?」

【宿の奥さん】「あぁ彼女さんね、1時間くらい前に洗面所の前ですれ違ったわよ。」

 いや彼女じゃないですけど。

【健一】「なんかいなくなっちゃったんで・・・ちょっと探してこようと思って」

【宿の奥さん】「えっ?いないの?どこ行っちゃったのかしら」

【健一】「いや先に出発するって置き手紙があったんで、出ていったんだと思います」

【宿の奥さん】「出発って・・・バスも冠水で動いてないのに・・・」

【健一】「ありがとうございます!行ってきます!」

【宿の奥さん】「あっ、ちょっとっ!」


僕は玄関の扉から飛び出し、車に乗り込む。
雨は滝のように降りしきっていた。




=============================




これ以上迷惑はかけられない。
そう思った。
わたしがいたせいで健一さんは予定通りの旅行ができなくなってしまっている。
健一さんは優しいから、それでもずっとわたしのことを気にかけてくれていた。
でも、足手まといになっていることを考えると、甘えてばかりはいられないと思った。

ありがとうの一つも言わずに出てきてしまったのはすごく申し訳ないことをしたが、出ていくと告げたらきっと止められるだろうと思ったから。
わたしが健一さんの自由を奪っているなんてことは思いもせずに、笑顔を向けてくるはずだ。
だから黙って出てきた。

昨日の夜からどうやって別れようか考えていたが、この雨のおかげでその方法は割と簡単に導き出すことができた。



歩き始めて30分。わたしの全身はもうびしょ濡れになっていた。
運動靴が重い。リュックも重い。

帯広の駅から宿までは車で10分ちょっとといったところだから、距離にして7~8kmだと思う。
宿にあったパンフレットに載っていた地図を確認したから、道はこれであっているはずだ。
頑張れば歩けない距離ではないが、まったく止もうとしない雨わたしの行く手に大きな壁となってそびえ立つ。
さしている折り畳み傘はその役目をほとんどなしていない。
まっすぐにのびる道も、今は雨により視界が遮られ、霞んでいる。

天気がよければさぞかし綺麗な風景だろう。
16時過ぎとは思えないくらい、辺りは暗かった。

道は人一人どころか自動車さえめったに通り抜けない。
バスの来ないバス停で一休みする。
汚れたトタン屋根はバタバタと大きな音を立てて、雨を受け止めていた。


「国道まで出ればタクシーくらい走ってるよね・・・」


雨音にかき消されて自分の声さえよく聞こえない。
おそらくあと20分くらい歩けば国道には出られるだろう。

これでよかったと思っている。
それなのに不思議だ。
自分が納得のいく選択をしたはずなのに、心にポッカリと穴が開いたような、そんな感じ。

これはなんだろう?
後悔?罪悪感?

よくわからない。
とりあえず今は歩き続けるしかない。
心が折れそうになる自分に言い聞かせて、またわたしはうつむきがちになって歩き出す。



その直後、わたしの真横を見覚えのある車がゆっくり通り抜けた。


「えっ」


車が停まる。
“その人”は雨にも負けない勢いで飛び出し、わたしは強く抱きしめられた。


【遥香】「───っ・・・!なにするですかいきなりっ!」


さっきまでもやもやしていた気持ちはすっかり消えている。
あぁ、そうか。やっとわかった。
なんでこんなことに気づかなかったんだろう。


【健一】「おい!おまえっ!どんだけ雨に濡れるの好きなんだよっ!何も言わずに出ていきやがってばかやろう!」

【遥香】「そんなのわたしの勝手じゃないですかっ!離してくださいっ!」

【健一】「勝手じゃない、こんな雨ん中いきなりいなくなって、どんだけ心配したと思ってるんだよ!」

【遥香】「・・・・・・すみません。これ以上迷惑かけられないと思ったから・・・」

【健一】「迷惑だなんて、一言も言ったつもりないんだけど」

【遥香】「そうだけど・・・でも・・・」

【健一】「もう二度と離さないから」

【遥香】「・・・えっ?・・・んくっぅううっ???」




聞き返す間もなくわたしは唇を奪われた。




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健一さーーーーん!!

とりあえずパンツ脱いどきます。

>>みやこじさん
次回は18禁です。
パンツ脱いで待っててください。

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4様ゲッター ◆B747SPoZAM

Author:4様ゲッター ◆B747SPoZAM
元・大学生活板コテハン
【性別】
男の子
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【出身地・居住地】
東京都
【趣味】
鉄道,野球観戦,アニメ,ゲーム,漫画,2ch等
【特技】
人を怒らせること,キモがらせること,嫌われること
【好きな声優(表)】
後藤邑子,新谷良子,緑川光
【好きな声優(裏)】
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【好きな絵師】
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【好きなライター】
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【好きな歌手】
BUMP OF CHICKEN,倉木麻衣,Mr.Childlen,Lia,Rita,霜月はるか

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